こんにちは。
今も昔も自分でビジネスを立ち上げるということはやったことがなく、この先もそんなことがあるかはわかりませんが、昔若いころは、ビジネスをして儲ける、ということがなんとなく悪いことだと思っていた時期がありました。 何とも無知で浅はかな考えではありますが、おそらく父親が公務員だったことも、ビジネスが何たるかを知る由もなく育った理由の一つではないかと勝手な責任転換をしてますが。
NYに住み始めて初めて仕事に就いたのは、日本語を流暢にしゃべるアメリカ人の歯科医のもと、経験もなく助手に。 え~、まあ、私には向いていなかったのだと思いますが、6か月で去ります。 NYの歯医者の数はゴキブリの数、と、法律家と並んで言われたりしていますが、あまりのビジネス的精神についていけない、などと生意気にも思ったものでした。 今から思えば、まったくわからなくもないし、その医者のスタイルだし、NYのカルチャー的なこともあるでしょうし、悪いことではまったくないのに。
カナダのFood networkチャンネルというのがあります。朝から晩までフード、シェフ、レストラン、コンペティションなど、関連していることを流しています。中には見てられない、という感じのものもあったり、繰り返しが多いこともありますが、先日なんだかんだで最後まで見てしまったプログラムがありました。Restaurant Take Over という番組のPeninsula Resort編がそれです。
オンタリオ州のSimcoe(シムコ)湖にあるPeninsula Resort というレストラン。2世代にわたって50年間経営を続けてきました。 が、そろそろ誰かに手渡すしかないかな、というぐらいすべてが古くなってきたところで、2世代目の夫婦がこの番組にヘルプを頼む、というあらすじ。
まずは若手のシェフ(Derek)とデザイナーの女性(Montana)2人が、普通のお客を装って訪れます。 内装、サービス、メニューの内容、出てきた食べ物の味、プレゼンテーション、どれをとっても、最悪~、という感じで「なんだこれ」「もうだめだね」のようなかなりの不満を次々と口にします。 こういうのは日本ではない、でしょうね・・・・。
オーナーと話をすると、もともと1世代目のおばあさんとその旦那さんが始め、すべて手探りで旦那さんが作り上げたものなので、気持ちは大変センチメンタル。それ故に2世代目は内装から何まで手を加えられず、ただ経営を続けているという状態。番組から来た二人は1世代目のおばあさんをなだめるために「わかるわ。つらい決断だと思う。」とか、「生まれ変わらせるだけ」とか言葉をかけるのですが、まあ~その心のこもっていないこと。さっさと決めて始めたほうがいい、という感じが90パーセント。番組ですし、断るわけはないんですけどね。
日本でも、こういうBefore&Afterみたいな番組がありますよね。それは見ているとなんて美談(?)なんだ~と思ってしまうほど、センチメンタルな古い心をうまく取り込みながら新たに建て直していた、気がします。少なくともそういうナレーションを入れながらの放送だった気がします。
この番組は、そりゃあそりゃあ、6日間しかない中で急いでやってやるぜ~という感じでバンバン壊すスタッフがやってきます。
とりあえずシェフは料理担当の奥さんが作るシーザーサラダ、Fish&Chipsを見学、味見。「まずい。 うえ~」みたいなことを平気でいうんですけどね。 全部冷凍食品や既製品で手作りのものはなし。そこで、メニューを見直し、食料の調達する場所の提案をし、彼のキッチンへ連れて行って軽い勉強へ。
Montanaのほうは半ばやくざっぽい壊し屋(いや大工)と予算や彼女のアイディアをシェアして、壊し屋(いや大工)のほうは6日しかないので、派手に壊し始めます。
途中おばあさんと息子夫婦を連れて壊した後を見せるのですが、おばあさん、旦那さんを思い出して「夫の苦労して作り上げた作品・・。」と目に涙を浮かべます。
番組の2人がまた、「わかるよ。つらいよね。」とその場でとりあえず慰め。
とにかく、1500ドルのチェックを二人に渡して(これがほんとなら決して高くはないと思うのですが)[訂正ーすいません、一桁間違っていました!!!15,000ドルです!]、レストランは生まれ変わります。この湖に面してたたずんでいるレストランらしく、マリーンのイメージで白とブルーでかわいらしく。いや~美しいけれど、前の面影っていうのは何も残さないんだなあ、やっぱり、と思っていたところ、最後にMontanaが「これはあなたに」とおばあさんに渡したもの。それは、古い壁紙を白い額に入れたものでした。 う~ん、これは魂のこもっている濃縮された思い出、そして思いやりがあって、やるじゃん!と思いましたけど。
それにしても、この番組で依頼を受けるレストランは、どこも15年ぐらいは経過していています。 TVのアプローチが先か、本当にレストランから連絡をして契約をするのか、その辺はわかりませんが、それにしても、長年、本当に長年やってきた後、新たに投資してやり直そう、というところがすごいなあ思ってしまう。これがビジネスを起こす方の根本にある必然性なのかもしれませんけど、15年以上後に、ちょっと生まれ変わろう、という気持ち、自分にあるかなあと自問。
レストランのリニューアルをした後は、どのオーナーシェフも新たなやる気で満ち溢れています(少なくともTVでは)。オーナーシェフたちは誰もが、別にシェフになるための腕を磨いてきたとか、そういうわけではなく、まさにレストランビジネスを立ち上げ経営してきた、という人たちですから、個人的こだわりよりビジネス的感覚のほうを重視しているんでしょうけど、そういう人たちだからこそ、この機会は良い刺激をうけている、という感じに私には見えます。
これほんとのはなしかなあ・・・とついついいつも疑ってしまうのですが、Peninsula Resort Restaurantは存在してます。
そのほかのプログラムもなかなか面白く、PCで見れることを知った後は、つい、最後に生まれ変わった姿と以前とのコントラストだけ見たくなる衝動に駆られていますが。7Days休みなく働く人々だから、なんだかその新たなやる気が、ものすごく楽しく仕事をしているようにうつりました。 これがビジネス成功への秘訣には違いないでしょうけど。
みなさんまた~♡
Shizuko