The conquest of happiness

Could be a wild horse...in north.
Could be a wild horse...in north.

こんにちは。

 

今回は2つ分野で有名人という、Temple Grandin(テンプル・グランディン)博士のことをシェアしたいと思います。  ご存知の方もいるかもしれませんが、私は全く今まで知りませんでした。 グランディン博士は、動物学者であります。 動物のことを研究し、ミートインダストリー(主に牛の家畜施設)では、非虐待的な施設の設計をし、マッチョなその世界において今ではロックスター。 もう一つの分野は、自閉症を専門にする施設や研究者の世界です。 彼女は1947年の生まれで、まだ世の中に自閉症という名前もその原因もはっきりわかっていなかった時代から自閉症を抱えて生まれ、その苦労はもちろん計り知れないのですが、今では博士号を取得し執筆活動もしています。

グランディン博士の自閉症のMindと動物のMindは似ているという理論の説明: 自閉症を抱える人には、普通の人よりも五感覚が敏感で、音、色、ビジョン、匂い、肌にあたるのもなど、すべてがものすごく鋭く感じ、その恐怖でパニックに陥ると。 動物も同じで、ちょっとしたことでビクビク、とする。そして危険じゃないかと、音がする方を見たり、見慣れないもの、動くものの方をこっちか、あっちか、と警戒してみている。

 

「私たちが動物を食するのは理論的なことだと思う。けれどそのためにも、動物をリスペクトして、正しく育て、おびえさせたり痛い思いをさせずに最後を迎えてあげることが大事」というのが彼女の理論。そして、牛たちを肉にする過程まで怖がらせず、スムーズに歩かせるための施設の設計をします。いまではアメリカの数多くの施設で彼女の考案を実施していて、アメリカ政府は彼女に新たな施設考案を頼っている、とのことです。

Driving through the north.
Driving through the north.

紹介するYoutubeの映像は、牛の中に混じってじっと地面に寝る彼女から始まりますから、衝撃的です。

家畜施設はなかなかマッチョの世界と書きましたが、当時25歳でこの仕事をしてみたい、と思って飛び込んだ彼女にとって、初めは大変だったことを語っています。ここでは自閉症など関係なく彼女を扱います。 「今じゃセクシャルハラスメントだとか言っていろいろ告訴があったりするけれど、私が経験してきたことには比べたら、取るに足りないことだね。 アリゾナのある施設で、牛を調べたい、といって牛を私の車に放り込んで、そこで切ったりいろいろ調べ始めたよ。 もちろん(車の中の)すべてのものを捨てなくてはならなかったりしたけど、そのことに対して大騒ぎはしなかったね。 それが彼らのやりたいことだったとしたらしょうがないでしょ。」と。

Oil machines are everywhere.
Oil machines are everywhere.

家畜施設を見学していて、彼女自身の病状を和らげるためのヒントとなったものがありました。 それがHugBoxというもの。 牛たちがワクチンを打たれるときに、カチャっと左右から圧迫されながらはめられる機械があります。顔だけ出ている牛たちの耳の裏だか表だかに注射をするんですが、見ていると、機械にはめられた牛たちが興奮するものもあれば、なんだかスーッと力が抜けたようになるのもいる、と。

 

それで博士、これは自分にも気持ちいいかも、と作っちゃいました。現在このHug Boxはいくつかの自閉症のための施設でも使われているとのこと。日本でも2カ所で使われているそうです(Wikipedia)。

Happy cows in Alberta
Happy cows in Alberta

自閉症というのは50年代になってようやくその名前もひろがり、その後、原因が脳の異常なシステムにある、ということが分かるまでずいぶん時間がかかったんですね。それまでは、精神病、または環境や家族の接し方が原因になっている、と考えられていた、というから、ご両親、特に母親はとてもつらい思いをしたとのこと。 博士の母親は、精神科医の何人かに相談したけれど、その時の苦い思い出も語っています。 結局一人の看護婦のセラピーによって、博士は3歳でようやくしゃべれるようにはなりますが、その後もいわゆる精神分析科の医者にいき、時間の無駄だった、なんて語っております。 

 

その後いい教育者に巡り合ったとかたっています。それでもお年頃の中高生時代は、ほか生徒からの心無い言葉などに傷つき、一番つらい時期だったと語ります。「今は笑って話せるけど、その時は傷ついていたよ。 テープレコーダってよばれて。感情はあるからね。」

Happy baby cows in Alberta.
Happy baby cows in Alberta.

自閉症を持った人の感情というのはとてもシンプルだと語ります。恐怖感、喜び、悲しみ、怒り。それでも「感情的なつながりという部分をほかの人は持つけれど、それは私の一部ではない」といいます(Wikipedia)。 逆に、だからっていうのは変ですが、独身で、子供も持たないけれど、追求していくものを見つけて楽しみをもっているこの博士は、ものすごくピユアで幸せそう・・・に見えるわけです。計り知れない苦労をしてきたというのに。最後に、「私は理想主義ではなくて、現場で証明をしていく、という何とも実践的な世界にいる。」という彼女の言葉がありますが、うわ~、科学者っぽい上に土の臭いのある言葉。 そして改めて、自閉症は脳の障害だけれど、ある意味持って生まれた個性であり、さらに個性が強い個人に対しては、その人に合った教育さえ幼少時代になされれば、芽が出る前に失われることはないんだ、ということも学びました。  次に生まれ変わったら、博士のような科学者になりたいな・・・ってすでに、実践主義とは程遠い自分かな。

 

良い一週間をお送りくださいね。

 

Shizuko