こんにちは。
今年はきっと秋が楽しめる良い年だったに違いない、とまだまだ紅葉の美しい外を歩くたびに思っています。なんていったってここAlbertaに来た時は、真っ白々の世界が続き、「秋はないよ。」なんて聞いてたものだから、本当にどうなるかと思っていました。 とはいえ、気温は15度以下や10度を下回っている日も多くなりました。 でも、なんというか、早朝のジョギング時はマイナス1度であっても、日本で同じ気温だったらもっと寒いはずなのに、数字とは裏腹それほどでもないんです。 気温と湿度がいかに関係しているか、ということでしょうか。
さて、いくつもあるTVチャンネルのなかで、決まってみるチャンネルは数個に限られますが、その中で、昔の名映画(っていうんですかねえ)をずっと流しているチャンネルがあります。 たまにはまってしまうのですが、その中で最近見た「Leave Her to Heaven」という作品についてちょっとおしゃべりします。
どうぞ、お茶でもすすりながら付き合ってくださいね。
優れた小説の映像化がほぼ文化となったアメリカで、この作品もその一つ。1940年代のもので、Ben Ames Williamsが書いた小説をもとに作られています。
よくある「上流階級が舞台になった作品」の一つ。 いいところの御嬢さんがある作家に恋におちるのですが、この御嬢さんの名はエレンといいまして、シェイクスピアはマクベスの女版。とにかく嫉妬深く、愛する者を束縛しようとする気持ちのあまり、次々と悲劇を起こします。
愛しすぎると悲しくも恐ろしい嫉妬心に変わり、狂気と紙一重。確かに病的といえば病的な行動で罪を犯すエレン。最後は「彼女はモンスターだった」と、彼女抜きで一件落着するのですが、新たな興味と疑問が生まれます。
このエレンの家庭の設定ですが、年の近い養女として育てられた妹がいます。 エレンは母親よりも父親を溺愛し、どうも母親との関係が温かくない。 エレンという狂気沙汰な性格を作ったのは、この母親との関係なのか、それとも先天的なのか。 先天的だったとしても、母親との関係が疎遠過ぎるように映ります。 なぜこの母親は男の子ではなくてわざわざ女の子を養子にしたのか・・・。
エレンがというより、この母親との関係が悲劇を引き起こしたに違いない、というのが私の見方なのですが、映画の中ではエレンだけが悲劇的狂人。
女性として、人間として、こういう悪者扱いされる女性が救われるといいなあ、という思いと、どうしてこうなっちゃったんだろうという興味を持たせる作品でした。
心理的トラウマと母娘の関係が原因で犯罪を犯し続ける女性が救われた映画としては、ヒッチコックの「Marnie(マーニー)」というのがあります。この映画はしょっちゅうTVで繰り返されているので、私も一度最後まで見てみました。
マーニーは小さいころ育った環境と、その時起きた事件がトラウマとなって何かにおびえています。 母親のために盗みを繰り返して行くのですが、金庫泥棒を知っていながらも彼女にひかれたお金持ちの男性が、最終的に彼女を救います。 この男性の愛情というのが、先ほどのエレンとは全く違って、「与える」だけなんですね~。ちなみに、ショーン・コネリーが演じてるんですけどね。(カッコよすぎ~♡)
実際に精神的な後遺症というものは思ったより長く、ほぼ一生付きまとうのではないか、と私は思うのですが、映画は実にハッピーエンドで、とりあえず安心させてくれますね。
この秋、文学や昔の映画にもっと触れられたらいいな、と思いますが、なるべく英語で訓練!と思っているので、スピードはかなり遅そう。 新しくて優れた世界の映画の情報は、どちらかというと日本のほうが多い気がするので、その辺は皆さんから教わるとして、また小話に付き合ってくださいますように。
それではまた、お便りします。
良い一週間を。
Shizuko