気まぐれの雪の後は、何とも温かい秋晴れが続いています。
お元気でしょうか?
さて、移民者向けの仕事場で役立つソフトスキルのための無料オンラインコースを初めて、やっとUnit3に入ったところですが、ここにきて「面白い」というものに当たりました。正直このままの内容だったらおそらくネガティブなフィードバックを送らずを得ない、と考えていた矢先。フランスからの移民で博士号をアメリカで取得している、Lionel Larocheという人のコンファレンスの内容を見るという宿題にあたりました。 これがなんとも、わかりやすく面白く、大変勉強になったと思える、腑に落ちた内容でした。ちょっと硬いお便りになるかもしれませんが、シェアさせてくださいね。
ソフトスキルの内容とはちょっとずれますが、彼のプレゼンテーションのなかで、カナダの政治的バックグランドの説明がちらっと出てきました。カナダは移民の国、アメリカと隣接しているからほぼ同じ感じ、と思いがちですが、いやいやこんなに違うと改めて納得。Larocheの説明をそのまま引用します。
カナダ、USA,インド、ナイジェリアのすべてイギリスの植民地下にあった四つの国の独立年月日を比べて見てみます。
USA:1776年 7月4日
インド:1947年 8月15日
ナイジェリア:1960年 10月1日
で、カナダは?という質問。 カナダの独立記念日っていうのはないんですね。なぜならカナダは、徐々に変わってきている、という感じ。1867年 7月1日にカナダという国ができたわけですが、この時点でカナダ国旗があったわけでもなし、自国の軍を持っていたわけでもなし。ちなみにカナダパスポートができたのは1947年、国旗ができたのは1965年。憲法は1982年。それまでずっとイギリスのもとに何でもあったわけです。その間、市民革命というものは、まああったとしたらケベック州の1960年から1972年にかけての12年間。 革命中、命を落とした人は一人だけだ、なんて冗談交じりにLaroche。
要するに、イギリスからの独立を強く望んでできている国、ではないから、移民の国アメリカとはかなり違うわけです。
さてでは移民たちに話をうつします。 正直もし私がカナダで生まれた白人の男性と結婚してここにいたら、移民者や政治的カナダのシステムなど、あまり考えなかったんじゃないかな、と思うのですが、ダーリンはどんなに英語が流暢でカナダのシステムに精通していても、やっぱり一移民者。だから私自身も「カナダ人の妻」というよりは、一移民者として自分を考えます。
それにしても多くのカナディアンは普通、移民者たちがどういう段階を持ってカナダに来たかなど、知るよちがないのは当たり前のこと(日本だって誰がそのようなディテールを外国人移住者の方々に対して理解しているか)。 だから、「移民者はテクニカルスキルにフォーカスしているが、カナダではソフトスキルが求められる」と、一見不思議なこのフレーズに何の疑問も感じないのは当たり前、と思います。 私自身はこのコースが始まってからずーと違和感ばかりがあったのですが、やっとこのLarocheの講義を聞いて、納得。それはカナダという国をよく表しているこんな内容です。
カナダは先進国の中で、イミグレーションに関してほぼ完ぺきなコントロールをなしている国の一つであること。 つまり、イリーガルに入ってくるのはとても難しい国。特に南はメキシコとのボーダーを抱えるアメリカと比べたら、地理的に優位にあるでしょう。メキシコ人がボーダーを超えていく先はせいぜいラスベガスぐらいでトロントまで来ようとはしないだろうと冗談。
それを踏まえて、Skilled workerとしてカナダに入れる移民者たちに要求されているそのポイントは高く(ポイントシステムで最低ポイントをクリアーしないと移住申請できない)、それゆえ「テクニカルスキルにもっと重点を置いている移民者」と思われがち。
しかし、Laroche自信、フランスではチーフという立場にいて、リーダーシップ、プレゼンテーションその他もろもろのソフトスキルは高く、そうでなければならない立場にいたと。
ところがカナダに来たとたん、一夜にしてソフトスキルが低くなってしまった。彼が変わったのか?というと、そうではなく、ソフトスキルの標準を図るベースそのものが変わったからだと。そのベースというのがカルチャーというものの上にあるのだ、というのでした。
大変わかりやすい例を挙げてくれています。
例えばチームワークというソフトスキルで、チャイニーズレストランとカナディアンレストランを比べてみます。
チャイニーズレストランでは、みんなが一緒にどのテーブルも見て、チップも後でみんなでシェアしてチームワークと呼びます。だからどのウェイターに声をかけても、声をかけられたウェイターが承ると。一方カナディアンレストランは、ウェイター各自の任されたテーブルというのがあって、チップも各自のもの。だからそばにいるウェイターに声をかけても、そのテーブルのウェイターを呼んでくる、と言われると。これをカナディアンレストランでのチームワークという。
「中国人ウェイターがカナダディアンレストランで働くことを想像してください。」とLaroche。 会場は笑い声がこだまします。
まだまだユーモアたっぷりのソフトスキルにおいてのカルチャーの違いの説明があるのですが、とにかく、ほかの国でもソフトスキルの必要性が求められているのは変わらない、ということが証明されたところに、私は「そうだよね」と納得したのでした。
で、メンターとのミーティングを楽しみに準備まんたんで行ったのですが、テキストの「カナダでは何パーセントの割合でテクニカルとソフトスキルが要求されるといっていますか」の質問に私が答えると、「そうね。イミグラントはテクニカルスキルにフォーカスする傾向があるのよね。」と。あら・・・。このコースが無料でなくて、メンターがボランティアでなかったら、徹底して講義するところですが、「私が理解したのはそうではなくて、・・・」と手短に説明しました。「ん? そう?」という表情のメンター。ここはカナディアンの大らかさに習い、次に進みました。
つづく。
Shizuko