映画よりーFrom Cinema

ある日の夕暮れの写真、といっても夜9時近くだったと思います。 日が長ーくなってきましたから。 こんな日も続いたり、先日みたいなみぞれが降り続ける日もあったりと、26℃の日や7℃しか上がらない日などで冬服と夏服が行ったり来たりです。 お元気でお過ごしでしょうか。

本日は映画の話。 日本のNetflexの品ぞろえはきっと、こちらカナダと比べ物にならないくらいインターナショナルで、選択もいいものがそろっている、と想像しますが、カナダはお隣アメリカと比べ物にならないくらいがっかりな品揃え。つくづく「あの話題の映画たちが全く含まれてこない」と、選ぶのに相当時間がかかることがあります。 そんな中、最近のヒットは「Experimenter」という映画。 社会心理学者と訳すのかな、Stanley Milgaram氏という実在した人の研究を映画化しているのですが、その奥様役のWinona Ryderも変わらずチャーミングでよかった。 日本での公開はすでにされたのか調べていませんが、NYという独特の歴史、カルチャーが反映しているから、その辺も興味ある方にはお勧めです。

時は1960年代。ハーバードを卒業したMilgaramは、イェール大学、バーバード大学で指導をしてましたが、英語でTernurという、終身在職権を得ることができず、CUNYといわれるニューヨーク州のCity Universityでの指導に落ち着きます。 ハーバード、イェールというのはいわゆるWASP(White AngloーSaxon Protestant)が占める世界で、彼のようなユダヤ系の両親を持つ人種が名誉ある地位をこの両学校でもてることはなかなかなかったとのこと。 優秀ぞろいのユダヤ系学者はCUNYに集まったので、CUNYというと昔はユダヤ系の中でのハーバード大学といわれたんですって。 

こういうところがもうNYならではで、私にはかなり盛り上がっちゃう要素です。彼の研究は今となっては真新しい発見ではないものの、「人はどうして、悪とわかっていても(他を危険にさらすと分かりながらも)、あたかも自分の意志ではなくて上からの命令に従うためとして、恐ろしいことをなせる一部としてその行動をやめないのか。」という疑問と実験にフォーカスされます。 これは彼のルートにもかかわるのですが、ユダヤ人殺害、ホロコーストで働いていた人々の心理状態に関しての疑問から来ていました。

 

映画の中ではAgentic Stateという言葉で表されますが、なんというか、オーソリティーに従うことが最も大事なことだと信じ、一見よく仕事をこなしているようですが、まったく個人で責任を負う姿勢を放棄しているその状態を指摘します。 例えば病院の受付役の女性。患者は生死を争う状態だというのに、まずはフォームに書き込むように付き添い人に言い渡し、いつもと変わらないルーティンを崩さず、「やるべくことをやっている」と思い込んでいる。これは彼にするとティピカルなAgentic State.

それから、映画の中で彼がカメラに向かって解説をするとき、時々象が彼の背後に出てきます。これも、言いたいことをほのめかす、言葉を使わないメッセージで面白いです。 この映画、なんだかんだ言って3回見て、3回目はダーリンをうまく乗せて一緒に見れたせいで、途中停止して説明を入れてもらったりしてより理解できたという感じです。人種、階級、社会問題、今と昔の違い、などなど、楽しめる要素が盛りだくさんでした。 

 大変余談ですが、WASPの意味を、短大時代のアメリカ史の授業中、「冗談で、White Anglo-Saxon Of Superior Parents(優越な両親をもったアングロサクソン系の白人)と言ったりする」と講師が言ったその「冗談で」の部分をどういうわけか聞き忘れ?長い間間違って覚えていました。 この講師の授業では、「ある愛の詩」という昔懐かしの映画をちらっと見せてくれながら、アメリカでのユダヤ系人種とWASPとの階級やカルチャーの違いなどに触れたりと、映画を使って楽しく学べたクラスでしたが、先生の解説がなければただの恋愛映画で終わっていたでしょう。 上に乗せたTrailerはなぜかフランス字幕ですけれど。 フランスといえば、昔からある書店を守るためにアマゾンの郵送料無料システムを禁止したり、ウーバーのような地元タクシードライバーを脅かすようなシステムはすぐに禁止したりする国にNetflexはあるのかな。 シネマ文化が根強いから、仮にNetflexがなかったとしても、それはそれで理に適っている気はしますけど。

 

またお便りさせてくださいね。

では。

Shizuko